戦争が残すのは、戦時中に残されたままの人たち。
アメリカンスナイパー
米海軍のエリート部隊「ネイビー・シールズ」の狙撃手としてイラク戦線に赴き、4度の出征で160人以上の敵を仕留めるという驚異的な活躍をみせた伝説の男。無事に帰国し、愛する妻や息子と暮らすはずの彼の日常を、戦争の狂気の記憶が蝕んでいく。
PTSDを扱う作品。
わたし自身も複雑性PTSDなのでこの作品を見てみました。
PTSDが厄介なのは無意識下でのフラッシュバックと、常に戦場にいる感覚です。血圧も高いまま。わたし自身、血圧はいまだに興奮状態です。
戦闘態勢でしょう。虐待を受けた子、戦場に行くもの。
こうした経験は解離を招くか、虚無感を与える。でもそれをいつ治療するのか。それには本当に難しさを感じる。
主人公のモデルを殺害した青年もまたPTSDで苦しみ、射撃場で戦場に戻ってしまったと。
彼も悔恨に苦しみ続けていた。
世の中を見ていると、過去を忘れたことにするか無かったことにしてリセットする人がいる。こうした人は繰り返す。
銃も持つものにより変化する。
問題は銃口を誰に向けるべきかわからないような、精神状態に自分が陥っていることではないだろうか。
主人公は気づいていたのだと思う。
自分の病を治せるのは自分だけだと。なぜなら皆は「彼」ではないから。
そして治らないことも。戦争は現実に起こったことだから。
己の過去に銃口でもなく、後悔でもなく、哀れみを自分で与えることが救いになるのではないだろうか。
そしてもう一つ。
なぜ彼らが病を隠すのか。
弱いと思われたくないのではない。
守るものが多すぎて漬け込まれる隙になるとわかっているのではないだろうか。自分を守るために他者を切り捨てる戦場と帰ってまた家族を守るために自分を切り捨てる。
人間の「庇護精神」は戦争を産んでいるのか?答えは謎だけれどいつかわかるといい。