こんにちはおすすめの書物の紹介です。えびめです。
怪談というべきか、人ならざる者のお話。
人喰観音
虚無を生きる息子は一人の女性を拾う。山奥に棲んでいた女のようだが、少しずれておりどことなくおぼこい。そんな娘を男は溺愛する。
スイという女は、美しい体と観音様のようなのどかな顔立ちをしていた。
「大昔、人魚を食べたらしいの。今は人を食べているの。だからいつかいらなくなったら海に流されて、竜宮城で人魚様や乙姫様に生きたままお腹を裂かれるの」
「知っているよ。その時まで俺が生きていたら、お前が生きたまま喰われないよう、首を折って死なせてやる。できなかったら俺も一緒に喰われてやる」
分限者の薬種問屋に拾われた女、スイ。並外れて美しく豊艶な肉体を持つ彼女は、人の形をして人にあらざる「観音様」だった。――穀潰しの惣領息子と出戻りの老媼。
――男を好む旦那様と忠節を尽くす石女。
――姦淫された箱入り娘と不器量な妹。スイと因縁関わり合う男たち、女たちは、少しずつ、人倫を踏み外していく……。そして彼女自身も、奈落へ向けて堕ちていく。-amazon紹介より
ざっくりとした紹介
スイは観音様に似ている、というが人々はスイの無垢さに「母性」を感じ取る。
スイには母性は存在しないし、ただのよくわからぬ生き物です。
しかし、そのふっくらとした観音様のごとき様相に次第に、人間は狂っていきます。
男も女もスイを溺愛し、「母性」にしがみつきます。
しかし、スイは無垢なただの乙女。人間の欲望により、スイはあり得ないものを食べていくようになります。
観音様を地に落としたのは人間
仮にスイが観音様の化身だったとしても山に置いておくべき存在でした。
人知を超えたものに人が触れた時に、それは邪悪なものに変化する。
もともと人は、神聖なものをうまく扱えないのかもしれません。堕ちていくかのようにスイもまた異形になります。名もなき者を化け物にするのはいつだって人間です。
最近、観音様を見る機会があったので
木彫りの練習の観音様でしたが、顔は修正を加えられていました。
この観音様の顔が肉感豊かで、にこにことしていたらわたしなら顔を削るだろうかと悩みました。この観音様は木彫りですが、人間というものは物にも異常な愛着を注ぐもの。特に日本人にその傾向が強いようです。
観音様のようにふっくらとして動く女性がいたとしたら。ぞっとしますね。
そんな存在に出合わないことを祈ります。
おわりに
だいぶ、残酷な描写や猟奇的な描写もあるので苦手な方はご注意ください。