一族皆殺しじゃー!
呪われし銀
フランスのとある村でロマ族の虐殺が起こる。そのロマの老婆が持っていた「銀の付け歯」により呪いがかけられ村人たちは次々と狼に変貌してしまう。
生物学者が以前の同様の事件からそのロマ族を追いかけていたために、その村を訪れる。
ネタバレしつつ解説
- ロマ族の銀の付け歯とはなにか
- なぜ銀歯を装着した彼だけ普通に殺されたのか
- ユダの銀貨とロマ
宗教的な解釈に基づいたゴシックロマンなのかもしれませんが、いまいち納得がいかない部分があったので書いていきます。
悪夢から始まる真相
ロマ族の虐殺により、呪いがかけられた領主一族。その土地にも呪いがかかります。
みな悪夢にうなされるようになり、子供たちはロマ族のものを虐殺したことを知ります。そしてそのうちの一人が、ロマ族の銀歯を誘われるように装着して領主の息子エドワードに嚙みつきます。
そのご、エドワードは姿を消し、エドワードをかんだ少年は死体で見つかります。
彼は死体になる前に「灼熱に焼かれているようだ」と表現します。
聖書で裏切り者の死後のユダの境遇と似ています。
しかも、彼自身の聡明さが異常なこと。「大人たちの呪いをうけている」ということと銀の正体が「ユダの銀貨」であると表現します。これが暗喩であればいいのですが。
私が疑問を持ったのはロマ族に「ユダの銀貨」を持っているという設定を付けたことなのですよね。
イスカリオテのユダはイエスの弟子たちとは違う出身地
なにも弟子の離反とか裏切りとか、ユダだけじゃなくてもうユダと同列じゃないの?てレベルに行われているのでユダだけ強調されるのは微妙な気持ちです。
これはたぶん自分の罪を隠すためにユダを一番の悪にしたかったのではないかと。
そしてユダは一人、どこから来たのかいつ弟子になったのかあいまいなロマ族と同じような不明さが目立ちます。
ほかの弟子と違うのはユダは裏切ることをイエスが知っていてユダもまた知っていた。ユダはあえて裏切ったという説もあること。イエスの指示で裏切ったということ。
「ユダの福音書」を読んだことがあるので考え込んでしまいます。
ユダは必要悪、そしてユダの役割を果たしたものは銀の牙を装着した少年ですよね。
ユダは裁きをイエスに受けるように促す役目を持っていた、というのがユダの福音書のおおまかな流れ。
・ロマ族の銀の付け歯とはなにか?
私なりに考えてみると、脚色でもなく本当にユダの銀貨の一部だったのではないか。
そして聖遺物並みに呪いの効果を発揮できるものであったのかもしれない。
流浪の民が何を信仰しようと、神は残虐な行為に荒ぶるということ。
・なぜ銀歯を装着した彼だけ普通に殺されたのか
彼は、エドワードにより殺されます。
聖書の一部を手にして。なぜ彼は「狼」に変貌しないのか?彼の役割はエドワードを「狼」にすることであり、呪いを受けないのは神の意図だったのかもしれません。
そのまま天に行かせてあげよう、と。あとは真実を知ってたどり着いてしまったために早々に口封じかもしれません…。
・ユダの銀貨とロマ
ユダの銀貨が実在したとしたら、溶かされてほかのものに使用されていることになります。なぜロマの老婆がこれをもっていたのか。これにはロマが窃盗や占いなどで生計を立てていたために迫害された歴史も絡んでいるのかもしれません。むしろ引き寄せられるようにロマ族に「ユダの銀」は集まっているのかもしれません。
暗喩として表現すべきなのか悩むところですが「弱きものを私欲により虐げてはいけない」ということも神の裁きなのかもしれないです。
ロマ族たちに一切の良心の呵責を感じない人々
領主一族は、ロマ族の虐殺に関しては口はつぐんでいたものの人間扱いをしていないために全く悔いていません。
んー呪われたというより「ユダの銀貨」というパワーワードが出たことで「狼」と領主たちが表現してごまかしまくっている「自分たちの罪により呪いを被った者たち」です。ごまかしまくっているけれど、信仰心というより、人間性がこっちのほうが化け物ですよね。でも「ヨブ記」で神はサタンをヨブに送っているし、神様がやりそうなことですよね…。
結局裁きは下り信じる者は救われない
終わりは、一応いいんじゃないですかね。
私はラストは素敵だし、欲望のくだらなさも感じてゴシックホラーとして最高だなとはおもいつつも「ユダの銀貨」をロマ族が持っているという設定じゃないといいなぁとおもいます。結構、ストレートな表現では使われないので、逆に変な偏見を産みそうだなと考え込んでしまう。ほんとうにただの「獣」なら宗教的なものは一切絡めないでほしかったなぁという気持ち。ユダの銀貨っていう必要あったん?
あーもやもやする