猫と本に囲まれて

読書と日記とお人形

【読書】楽園

京都の鴨川のほとり、かつて男が女を買いに訪れた地域に建つ「楽園ハイツ」。住民の間では、夫を亡くした田中みつ子が「最近綺麗になった」という噂でもちきりだった。アパートの中で静かに熟成される疑い、焦り、嫉妬が頂点に達したある日、「事件」が起こる――。京都と性愛を描き続ける注目著者による、女の人生絵巻。

 


禁断の果実は性愛でもなく確実に手に入る愛と欲望と離れられぬ関係。

自分が産んだアダムを我が物にする。それができれば最高の人生だろう。

男は女から生まれ落ちて、母親を喪失して他の女性に向かう通過儀礼を迎える。

歳を経て女は確実な愛などあるのかと思い始める。

どれだけ美しくあろうとしても若さには敵わない。

若いものに勝てる手段が自分の生んだ息子を恋人にすることだ。

そうして歪んだ楽園は堕ちていく。女は男がまだ若い娘を追いかけることに落胆し、そして性愛の楽園のために。

著者のブログにあるように、女性の「性」を開放したいとあり、この楽園はその切なさ哀れさを見事に描いていた。何度も読み、涙しそれぞれの女たちに自らを重ねている。